15時半、R12号線が岩の丘を抜けるポイントを通る。E.pentops(白頭竜)を似たようなポイントで見つけたので、その再現を狙って索敵するも空振りに終わった。


索敵したR12号線のポイント


名無し7−2−1


左上の画像の道路向かいから見た景色


上の画像の南側の景色

 16時、31℃。Britstownの手前20kmから丘が多いエリアに入った。道路の両側の植物の植生も変わってきたので、停車して索敵してみる。緑枝類のゆーふぉの他にメセンや奇妙な袋状のものをつけた植物を見つけた。この袋の中には種子が入っているようだ。Britstown近郊でE.fusca(蛮蛇頭)の分布報告があるので、Postmasburgのリベンジも兼ねて南アフリカ共和国中部に分布するこの激レアのタコ物を見つけたいところだ。


R385号線の景色1


名無し7−2−2


名無し7−2−2をアップで


メセン 名無し7−2−3


メセン 名無し7−2−3の花をアップで


名無し7−2−4


名無し7−2−4をアップで

 R12号線をそのまま南下していくと、しだいに周囲の景色が蛮蛇頭の現地写真の背景のように変わってきた。期待も高まる。運転しながら道路の両側、特に進行方向の左側を注視する。道路がずっと真っ直ぐで対向車もほとんど来ないので、5秒間横を見て一瞬前を見るというのを繰り返す。


R385号線の景色2

 16時半、Britstownの町に近づいた時、道路横の牧場の敷地の中に見間違えることもないシルエットの植物を発見。停車して急いでその場所に戻ると。。。やっぱり蛮蛇頭だっ!!!やっと見つけた。フェンスから15mほど内側の周囲に草がない所にぽつんと1株生えていた。フェンスの外側から周囲を探すと、他にも2株見つけた。フェンスなんぞ乗り越えてすぐにでも駆け寄りたいところだが、それを許さない事情があった。そこから200mほど先に休憩所があり、その前で警察官が検問をやっているのが見えたからだ。通行量も少ないのでこちらをじっと見ている。完全に俺をロックオンしたようだ。ここでフェンスを乗り越えて中に入ろうものなら捕まるだろう。かといってUターンして逃げても不審者として追いかけられて捕まるだろう。まあ、そもそも目前の蛮蛇頭云々ではなく、車の後部座席に置いてあるデカい段ボール箱には見つかったらヤバいものがたくさん入っている。今すぐ蛮蛇頭の傍に行くことを諦め、写真だけ撮って車に戻ってそのまま走り出した。すると予想通りわざわざ反対車線なのに警察官が俺の車を止める。窓を開けると、「How are you?」。まずはお決まりの挨拶で様子見のジャブを打ってきた。後ろめたい時こそそれを顔色に出してはいけないので、わざととびきりのハイテンションで「Very very fine!!!」と答える。このまま「テンション高過ぎでついていけない兄ちゃん」を演じることにした。続けて警察官が「あそこで止まっていたけど、何かトラブルでもあったのか?」と訊くので、撮ったばかりの写真を見せながら、「何もないよ。俺は日本から来た植物写真家だ。Postmasburgから2日間走ってきて全然何も見つけられなかったけど、さっきやっと見つけたんだ!この写真を見てくれよ。イカした植物だろ?最高だゼっ!ヒャッホー!!!」と変わらず異様なハイテンションで答えた。警察官は俺の満面の笑顔と蛮蛇頭の画像で納得したようだ。それとも異様なハイテンションの東洋人にこれ以上付き合いきれないと思ったのだろうか。探るような目つきだったのが、急に柔らかくなった。「Britstownに泊まるのか?」と訊くので、「そうだ。もうすぐ夜だしね。」と答えると、「行っていいよ。」とお許しが出た。 ( ̄m ̄〃)ププッ チョロいもんだゼw ペルーでもケンカやその他諸々で何度も警察の世話になった経験があるから、こういう時でも精神的に余裕があるし、あしらい方も心得ている。旅は多少スリルがある方が楽しい。


蛮蛇頭1


蛮蛇頭2


蛮蛇頭3(画像中央)

 そこから200mほど走ると、蛮蛇頭があった牧場の敷地内を走る1台の荷馬車を見つけた。御者はここの従業員だろう。時間的に今日の仕事を切り上げて帰宅するのだろうと考えて、牧場に入る許可を得るために出口に先回りした。やがて荷馬車がやってきた。40代後半から50代前半と思われる黒人が彼の孫らしき子供を2人連れていた。さっそく中に入っていいか交渉してみるが、彼らが出てしまうと牧場は無人になってしまうので、俺が出る時に施錠できないんだよと言われた。ということは、中に入ること自体はOKということだ。昨日は丸一日探してボウズ、今日ももうすぐ日が暮れるというのにここまでボウズ。予定ではもっと南まで進まなければならないが、やっと見つけた激レアタコ物を遠くから見ただけでさよならするなんてもったいない。明日は明日の予定があり、激レアタコ物のE.clavarioides(飛頭蕃)などの分布地を巡る予定だが、行ったところで見つけることができないかもしれない。それよりも目先の蛮蛇頭だ。そう考えて、遠征のスケジュールを変更して今晩はBritstownで宿をとり、明日彼らが再び仕事に来る時に一緒に入ろうと考えをまとめた。同行者がいるわけでもないので、誰にも気兼ねすることもなくスケジュールを臨機応変に変えられるし。ポールという名のその黒人従業員に明日何時に来るかと訊くと、8時に来るとのこと。そこで俺は町に宿泊して明朝7時半からこの入口で待っているから一緒に入らせてくれと頼むとOKをもらえた。ポールは俺に携帯電話の番号を教え、町で泊まる宿が決まったら連絡をくれと言った。明日の約束ができたのでポールたちと別れて町へ。


町の入り口にて

 まずは宿探し。町に入って300mほどの所でゲストハウスを見つけたので停車する。ちょうど白人のオーナーが出てきたので値段を訊くと300ランド(約3000円)だと言うので即決。ホテルのバックヤードに車を入れ、部屋に通された。室内は小物に至るまでセンス良く整えられているし、風呂があるのが嬉しい。フロントに移動して宿帳に名前等を記入して宿代を支払う。オーナーが前にも日本人が来たことがあると言ってノートを見せてくれた。しかし、書かれていたのは予想通り中国語と韓国語の文章。黄色人種が少ない国では間違われるのはいつものことだ。相手に悪気がないのはわかっているが、クソどもと一緒にされるのは気分が悪い。どうやら日本人の客は俺が最初のようだ。フロントがある部屋でオーナーの家族の女性2人が編み物をしていたので、4人でしばらく歓談する。「俺はほんの少ししか英語が話せない。中学生の時、英語の授業中はいつも寝てたからね。」という鉄板ネタでここでも話が弾んだ。


宿泊した部屋

 まだ外は明るいので町の白人居住区を散歩してみることにした。もちろんオーナーに安全かどうかは確認済み。Britstownは小さな町で、中心に教会がある。でも、レストランらしきものは見えない。通りには黒人が多いものの、白人もちらほら見られる。朝からずっと吹いている風がこの町でも強くて、砂埃で目が痛くなるので早々に宿に引き上げた。


Britstownの町並み

 部屋に戻ってベッドで寝転んでいたら、19時頃にそのまま晩飯も食わずに寝てしまった。


作戦終了地点  Britstown
戦果  なし
本日の行軍距離  378km
総行軍距離  3620km





inserted by FC2 system