13時、14℃。昼食後の休憩を終わりにし、Britstownの町を出てR12号線を南下する。雲の切れ間から時折太陽が顔を出すが、時には雨もぱらつく曇天は変わらない。ポールの話ではこれでも雨の季節らしいが、大地は非常に乾燥している。町の南もE.fusca(蛮蛇頭)を見つけたポイントのような荒野が広がっているが、運転しながら索敵したかぎりでは見ることはなかった。道路はやがて山岳地帯に入った。


Britstown近郊のR12号線にて


R12号線の景色1


R12号線の景色2


R12号線の景色3


R12号線の景色4

 14時20分、Kareeplaatという名の集落の近くで索敵した。緑枝類のゆーふぉとメセンを見つけたが、タコ物はなし。


名無し8−2−1


E.sp.(不明種)


R12号線の景色5


名無し8−2−2


名無し8−2−3

 14時40分、Victoria Westに到着した。気温12℃。ここから計画通りの遠征のルートに戻った。町に入ってまずは給油。1リットル=13.54ランド(約135円)だ。給油だけして通過する予定だったが、スーパーを見つけたので立ち寄ってみる。名前は「SPAR」。ロゴまでそっくりだが、日本にあるようなコンビニではない。<帰国後に調べたら根っこがつながっていたことがわかった。詳細はここで。>品揃えは豊富で既に洗浄済みのサラダを買うことができたのが収穫だった。他にトマト・パン・タバコを買う。店の斜向かいに露店があるので行ってみた。ジャガイモ・タマネギ・キャベツ・アボガドなどいろいろある。ビタミンの補給も兼ねてバナナを10ランド(約100円)で2袋購入した。


Victoria Westのスラム街


SPARの店内の様子


SPARの外観


新鮮な野菜を売る露店


町外れの山の斜面に白い岩で描かれた町の名前

 スーパーの前の道は、俺がこれから走る予定のR63号線。露店のおっちゃんに訊くと目指すCarnarvonの町まで舗装されているとのこと。さすがは2桁ナンバーの道路だ。もうパンクはうんざりなので、できるだけダートロードは走りたくない。R63号線で最初の索敵をすると、この遠征でまだ見たことがない種類のアロエを1株だけ見つけた。緑枝類のゆーふぉもあったが、灌木と雑草ばかりでタコ物はなし。走行していると、ポツポツと雨が降り出し、それがなんとみぞれに変わった(ただし、すぐに止んだけど)。


R63号線の景色1


R63号線の景色2


R63号線の景色3


R63号線の景色4


R63号線の景色5


R63号線沿いの牧場の正門
正門は立派だが、それ以外はワイヤーや有刺鉄線で敷地は囲われている


R63号線の景色6

 16時、10℃。

 17時、8℃。

 何度か停車して索敵するも、成果は全くない。だんだんと日没サスペンデッドの時間が迫ってくる。ゆーふぉの情報を得るために、道路沿いの牧場主の家に突撃。50代後半ぐらいの白人オーナーに訊くと、この辺りにあるにはあるが、とても数が少ないとのこと。隣の牧場主に訊けば何か情報が得られると教えてくれた。どのみち進行方向にあるので、数km走って隣の牧場へ。今度のオーナーは70代ぐらいの白人。身長が190cmぐらいあってデカい。外は寒いからと家に招き入れてくれた。さっそく蛮蛇頭の画像を見せて訊いてみる。「こんな植物を見たことはありませんか? ここでは『メルクボス』って呼ばれています。この牧場の敷地内にありませんか?」「これは傷付けると有毒のミルクを出すやつだろ?知ってるよ。」(よしよし。で、どこにあんのよ?)「でも、これは『メルクボス』じゃないね。」(えっ!?ポールは「メルクボス」だって言ってたよ。。。)「『メルクボス』は枝がもっと滑らかで、黄色の花を咲かせるんだ。これぐらいの大きさだよ(手で床から30cmほどの高さを示しながら)。Loxtonに行くなら町の入口にあるよ。道路の右側だ。そこにある。俺も昔そこから持ち帰って庭に植えたんだ。」これは有力な情報だ。俺は大きさと黄色の花という2つの特徴から、E.inermis var.huttonae(フットナエ)のようなタコ物を想像した。それに蛮蛇頭と違って枝にたくさん花茎が残ることもないので、滑らかといえば滑らかだし。まあ、フットナエはここから数百kmも離れた所に分布しているが、Loxtonにも同じような別種のタコ物があるのかもしれないと考えた。それなら未記載種である可能性が非常に高い。よっしゃ!オーナーのじっちゃんに丁寧に礼を言って出発した。

 そこからは道路の右側だけを重点的にチェックする。いつの間にか緑枝類のゆーふぉも見なくなったが、道中の索敵でフォーカリアを見つけた。Loxtonの手前で北側に伸びる名もない道に入ってE.hypogaea(螺髪竜)を狙う予定だったが、時間的にLoxtonの町の入口のタコ物と両方は無理なので、ポイントがはっきりしている未記載種のタコ物に狙いを絞った。


フォーカリア sp.

 17時10分、Loxtonに着いた。町の入口の道路右側には確かにゆーふぉがあった。

「でも、それは・・・ 緑枝類ですからっ! 残念っ!!!」

 牧場のオーナーが教えてくれたのはE.mauritanica(蒼竜)と思われる緑枝類だった。俺はその事実を認めたくなかった。だから、写真も撮らずに素通りし、タコ物を探し続けた。しかし、町から5kmほど走ってもタコ物ゆーふぉの姿は見えず、現実を受け入れざるをえなくなった。そして、俺の頭にひとつの考えがよぎった。

♪ もしかしてだけど〜 もしかしてだけど〜 ♪
♪ 「メルクボス」って英語の「ミルクブッシュ」なんじゃないの〜? ♪

 たぶん「メルクボス」ってのはアフリカーンス語なんだろう。牧場のオーナーの説明も大きさ以外は確かに蒼竜の様子を言い表している。間違ったことは言っていない。それを確認もせず、自分に都合良く解釈した俺が悪いのだ。がっかりして、来た道を戻って螺髪竜を探そうなんて気にはならなかった。そのまま車を走らせ、Carnarvonへ。


Loxton近郊のR63号線にて


R63号線沿いの岩の丘


左の丘を微妙にアップで


R63号線の景色7


R63号線の景色8


名無し8−2−4
たぶん名無し7−2−4と同種で、袋が弾ける前の状態


名無し8−2−5


名無し8−2−5をアップで

 18時10分、8℃。Carnarvon到着。途中で何度か索敵したものの、とうとうタコ物を見つけることはできなかった。まあ、しょうがない。町に入って通行人に訊きながら宿を探す。最初に見つけたB&Bに入った。オーナーに1泊の値段を訊くと200ランド(約2000円)だというので即決。通された部屋にはダブルべッドが1床とシングルベッドが2床。エアコン・テレビ・シャワーの設備。電気ポットがあり、コーヒーと紅茶が用意されている。翌日の朝食を7時にお願いし、翌朝はかなり冷え込むと予想して車の荷物を全て室内に運び込んだ。その後、失くしてしまったライターを買いに町に出る。小さくて静かな町だ。


Carnarvonにて

 宿に戻って夕食にする。Victoria WestのSPARで買った野菜とBritstownで昼に買ったペッパーミートステーキパイだ。テレビをつけ、音声を理解する必要のないサッカーの試合にチャンネルを合わせた。どうやら国内リーグのようだが、選手も審判も観客も全員が黒人であることが気になる。アパルトヘイトがなくなった今でも黒人リーグみたいなものが残っているのだろうか?


Victoria WestのSPARで買ったもの


今日の晩飯

 食後は作戦日誌を書いたり、荷物整理をしたりしてのんびりする。エアコンを暖房の最高温度である32℃に設定し、風量も最大まで上げたものの、パワー不足なのか室内でも寒い。とてもシャワーなんぞ浴びる気にはなれなかった。しかし、外はもっともっと寒いので、毎回震えながらタバコを吸わなければならなかった。

 24時、就寝。



作戦終了地点  Carnarvon
戦果  E.fusca(蛮蛇頭)
本日の行軍距離  285km
総行軍距離  3905km





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