9時50分、13℃。開いていたゲートを通って教えられた丘に近づく。その丘はかなりの急斜面だ。タイヤ痕がいくつもついているのでここを自動車で越えることは可能だろう。しかし、日本でこれほどのヒルクライムの経験がなかったので躊躇した。自分の車ならまだしも、レンタカーだから転落でもしようものなら弁償が高くつく。徒歩で斜面を登ってみてやめた方が良いという結論を出したが、てっぺん近くまで登って周囲を見渡した時に丘の西側から回り込むルートがあるのを見つけた。車に戻り、迂回ルートを通って音楽ノリノリ兄ちゃんが教えてくれたフィールドに乗り込む。


画像よりも実物はかなり急傾斜だ

 轍の跡を通ってフィールドの中を低速で走りながら索敵した。フィールドの中は先ほどのフィールドと同じ雑草が生えており、所々にサルコカウロンなどの灌木もあるものの、背の高い木は全くない。フィールドのど真ん中にさしかかった時、枯草に雑じってやや傾いている今まで見た植物とは明らかに異なる草姿の植物を発見。停車して近寄ってみると、探し求めたE.melanohydrata(多宝塔)だった。10時7分、ついに見つけた!よっしゃーっ!!!情報をくれた音楽ノリノリ兄ちゃん、ありがとう!彼に会わなかったら、見つけられなかったかもしれない。昨夜がんばってこの町の近くまで走って来た甲斐があったというものだ。計画通りにAusで夜営していたら彼には会えなかった。ほんのちょっとのことだけど、小さなことの連鎖で未来は変わっていく。今回はそれが吉と出た。ラッキーだ!


やっと見つけた!


多宝塔の分布地にて


多宝塔1


多宝塔2

 最初に見つけた多宝塔の周囲を索敵してみたが、2〜3m離れた場所に1株あるだけだった。音楽ノリノリ兄ちゃんが言っていた「Lots of(たくさん)」という感じではない。そこから100mほど走った所でまた5株見つけた。土壌はRosh Pinah南西のフィールド同様、少し水分を含む砂っぽい感じである。


多宝塔3


多宝塔4


多宝塔5


多宝塔2株


右上の画像の多宝塔をアップで


多宝塔の亡骸

 2タイプあると聞いていたのでもう1タイプが気になるが、時間がたっぷりあるわけではないので、次のタコ物を撃破するために移動することにした。多宝塔を見つけ、俺は2004年のPRIDEグランプリの決勝でミルコ=クロコップがエメリヤーエンコ=アレキサンダーを左ハイキックで屠った後に言った言葉を思い浮かべた。

Emelianenko FedorEuphorbia namibensis,
 you are next!!!」


 11時、17℃。フィールドからC13号線に戻り、Rosh Pinahの黒人居住区の前にある看板で記念撮影をした<朝は逆光になるので撮影できなかった>。そしてすぐに出発。


Rosh Pinahの黒人居住区


Rosh Pinahにて

 ご機嫌なハイテンションのまま、ほとんど索敵もせずにC13号線を北上した。昨夜は夜の闇で見えなかった道路の周囲の景色がなんとも言えない。BGMは遠征中に気に入って毎日聴いているTUBEのベスト盤「TUBEstU」。『夏だね』の歌詞が今の自分にぴったりだ。


♪ 春一番が小さな過去へと 遠くなる九月 ♪

♪ 心はうわの空 指折り数えるばら色の夏休み ♪

♪ 笑顔が似合う 楽しくなる 理由もなく胸ドキドキ ♪

♪ 体中が感じてる 空とゆーふぉのハーモニー ♪

♪ 灼け付く陽射し激しく揺れ 沸き出す勇気 ♪

♪ 今なら打ちあ見つけられそう 心も程よく夏だね ♪

『夏だね』   by TUBE


 指折り数えて1年間も待った甲斐があった。人生でもベスト3に入る素晴らしい夏休みだ。それがもうすぐ終わってしまうのはとても残念だが、こうしてアフリカで最高の時間を過ごせるのは周囲の人の理解と協力があったから。そして、旅先で出会った人たちの助けがあったから。みんなに感謝しないといけない。


C13号線の景色1


C13号線の景色2


C13号線の景色3


C13号線の景色4


C13号線の景色5


C13号線の景色6


C13号線の景色7


C13号線の景色8

 12時、28℃。

 12時50分、28℃。Aus近郊に到着した。土壌はRosh Pinah周辺と同じように見えるが、周囲の植物は全く異なる。灌木と枯れた雑草のみの荒野が延々と広がっている。サルコカウロンやメセンの姿はない。


C13号線の景色9


C13号線の景色10

 <続く>






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