作戦日誌  Mission 06
作戦段階  第3フェイズ:南アフリカ共和国 西ケープ州侵攻
作戦開始地点  Koup駅の北約1.2km地点


 5時45分。起床。Tシャツの上にフリースを着て、さらにそのうえにウインドブーカーを着たうえで寝袋に入ったが、寒くて何度も目が覚めてしまった。幸い体感で昨日の朝ほどの冷え込みではないが、寒風吹き曝しだからやっぱり寒い。日の出はまだだけど、東の空は明るくなり始めている。
 
 6時20分。鍵探しを再開する。日本から持ってきたカロリーメイトもどきを頬張りながら、昨日から徘徊しているエリアをただひたすら探しまわる。しかし、今後のスケジュールを考慮して、9時までに鍵を見つけられなかったらナミビアのWindhoekにあるAvisの緊急コールセンターに電話しようとリミットを設定した。鍵を探しながら日本の嫁の携帯電話にワンコールを入れると、すぐにメールが送られてきた。ジュニアはいっぱい食べて、いっぱいウンコして、元気にやってるよ、と。

地球の裏側にいる旦那に息子のウンコのメールですか?w

 8時05分。1時間早いけど、ギブアップして緊急コールセンターにした。自分の英語が拙いのと携帯電話の電波が悪いのとで、顧客番号・車のナンバー・現在地・車の鍵の紛失という4つの事項を伝えるのに15分もかかってしまった。俺の携帯電話はソフトバンクのホワイトプランだけど、帰国後の料金請求がちょっと心配。。。また電話するとのことなので、いったん電話を切る。携帯電話のバッテリー残量は40%。やべぇなぁ。

 いずれ助けが来るので、時間があるうちに補給ポイント ヴォルフスシャンツェを設営しておく。道路から150mほど離れた小川の横のブッシュに場所を定めた。周囲にヤギの糞が散らばっていることからすると、ここにヤギたちが来ることは明白だ。この辺りには十分な草がないから、梱包に使っている段ボールや古新聞を食われる可能性がある。そうなると中のブツも巻き添えで食害されることに。。。それじゃ困るので、棘のあるアカシアの枯れ木でバリケードを作り、近寄れないようにしておく。これで安心。

 しばらくすると、電話がかかってきた。ケープタウンにあるAvisの営業所からとのこと。再度、状況と場所を説明すると、また電話すると言われて切られた。することもないので、鍵探しも兼ねてフィールドをブラブラする。昨日見た黒いバッタがいるのを見つけた。片方の後脚がないから、昨日見た個体と同じものだろう。観察してみると、20cmほど跳ねるのが精一杯で動きはとても鈍くさい。見るからに体が重そうだし、羽も短いから飛翔することはできないだろう。

 9時30分。再びケープタウンのAvisの営業所から電話がかかってきた。応答すると、すぐにちょっと待ってと言われて音楽が流れてきた。電話する前に用件をまとめとけよ!しかも保留中の音楽はなぜかENYA。

トラブルに遭遇して心身ともに疲れた利用者を

ヒーリングミュージックで癒してくれるサービスですか?

 そんな心遣い、別にいらねーし。で、1分ほどENYAの音楽を聴かされて、電話は切れた。。。おいっ!!!すぐにかけ直してくれたので、現在地を詳細に説明するとわかってくれた。そして、ケープタウンの営業所からサービサーがここに到着するまで4時間かかると言われた。4時間かぁ、長ぇなぁ〜。。。でも、この場を離れるためには待つしかない。これ以上鍵を探しても見つかるとは思えないし。緊急コールセンターに電話するのを1時間早めて良かった。この電話を切った後、今度は日本の嫁から電話がかかってきた。英語で電話がかかってきて、よくわからないけどこの番号に電話しろって言われたんだけど、なんかトラブルでもあったのかと心配になった、と。車の鍵を無くしたけど、もう助けを呼んだから心配いらないと説明して電話を切った。それにしてもなぜAvisのスタッフは日本の家に電話したんだろう。俺の携帯電話の番号を知ってるはずなのに。。。この時点で携帯電話のバッテリー残量は31%。ますますやべぇ。

 電話の後、周辺をぶらついていると、路上でまたまた例の黒いバッタを発見。後脚が2本とも揃っているので、昨日と今日見たのとは別の個体だ。観察してみると、やっぱり20cmほどしか跳躍できない。もちろん飛翔もしない。このバッタはまるで重戦車のようだ。跳躍力と飛翔能力を捨てて、このように重量のある体型に進化したわけだけど、どんなメリットがあるのか疑問だ。


バッタ

 車に戻って、遠征の今後のスケジュールを練り直す。昨日と今日で少なくとも2日潰れた。鍵の問題でさらに日数のロスは増えるかもしれないが、とりあえずこの2日については、消去法で東ケープ州の最東部エリアを断念することにした。Uniondale南のE.flanaganii(孔雀丸)似の不明種、De RustのE.colliculina、Steytlervilleの東のE.albipolliniferaとE.esculenta(閻魔キリン)、KlipplaatのE.sp.aff.gorgonis GM66(E.breviramaとして流通しているもの)とE.astrophoraなどのハントを予定していたのに。。。でも、仕方ない。旅は人生と同じで、良くも悪くも思わぬことが起きる。別に旅が終わってしまうわけじゃないから、気持ちを切り替えることが大切だ。

 時間が有り余っているので、洗髪することにした。100円ショップで買ったペットボトルの蓋がシャワー口になっているものを使い、雑用水で髪を洗う。この便利なアイテムで節水することができたので、2.5リットルの水で洗髪することができた。さっぱりして気持ち良い。

 13時。空腹ではないが、カロリーメイトもどきとプチトマトを食べて昼メシとする。携帯電話のバッテリー残量は20%を切ったが、まだ助けは来ない。その後、何度か携帯電話に電話がかかってきたが、電話が悪いのか全く会話ができない。そのうちに携帯電話のバッテリー残量はLOWの表示になってしまった。マジでやべぇ。


車の鍵を紛失したポイントにて(2日目)


右足の靴が。。。

 14時50分、待ちに待ったAvisのトラックがやって来るのが見えた。やっと来たぁ〜!!!荷台に同じ車が載っているところを見ると、どうやらここで車を交換するようだ。俺はスペアキーを持ってくるか、ケープタウンまで車を運んであっちでスペアキーを作るのかなと予想していたが、それなら時間のロスはなくなる。ゴツい黒人のドライバーが救いの天使に見えた。アンディーレという名のそのサービサーは、ここで乗り換える車はケープタウンの営業所に返却しに行く必要は無く、そのままナミビアのWindohoekの営業所で返せばいいと教えてくれた。説明の最後に彼はこう言った。「Because Avis is one.(なぜならエイビスは1つだから。)」理屈は簡単で、ナミビアと南アフリカ共和国のAvisは連携していて、利用者の中にはWindhoekとケープタウンの区間を片道だけ利用する者もいるのでそれに対応しているとのこと。だから、Windhoekの営業所にケープタウンの営業所の車があることもあるし、その逆もあるのだという。なるほどね。俺は代車として考えていたから、Windhoekに戻る前に再び交換に行かなければならないと思ってた。良かった。アンディーレは運んできた新しい車を下ろし、Windhoekから乗ってきた車を荷台に積み込んだ。1台目の車は2908km走ってくれたけど、ここでお別れ。2台目の車、これからよろしく。再度鍵を失くすことがないように、新しい車の鍵をカラビナに付け、車から離れるときはベルト通しにひっかけることを習慣付けるようにした。


運ばれてきた新しい車


新旧の車が揃い踏み(右が新しい車)

 30分ほどで車の交換作業は終了。救いの天使と記念撮影をする。帰国後に写真を送るよってメールアドレスを交換。別れ際、ケープタウンまで遠いから途中で飲み物とポテチでも買ってと言って、チップの意味を込めて20ランド(約200円)札を渡した。「ビールはダメだゼ!」と冗談も忘れない。


黒くてゴツい救いの天使 アンディーレと

 アンディーレが去った後、うっかりヴォルフスシャンツェに置いてきた箱の中に入れちまったモノを取りに行って戻ってくると、アンディーレのトラックが戻って来るのが見えた。何かあったかなと思って訊いてみた。俺が来るのをN1号線付近で待っていたけど、なかなか来ないから何かトラブルがあったのかと心配になって戻ってきたとのこと。良い人だなぁ。ブッシュから出てきたところだったので、ウンコしてたんだよと言い訳して笑いに変えた。

 15時35分。索敵のために移動する。E.multiceps(多頭キリン)が分布するGM437のポイントはすぐそこだ。<続く>





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