15時55分。Biesiespoortに至るグラベルロード(未舗装の道)の入口に到着した。さあ、ここから先は今日最後のタコ物探しだ。


 ★★★Mission 10−4   ターゲットはこいつだ!★★★

 この地で狙うのはE.albertensis GM240。 世界的に見ても全く出回っていないだけでなく、インターネット上にも資料や画像が全くないタコ物。わかっているのはBiesiespoort付近で見つかったということだけで、草姿の特徴や詳細な分布地のポイントなどは一切不明。この南のエリアにはE.crassipes(倶梨伽羅玉)が分布しており、E.albertensis(蘭蛇丸/宝冠/錦宝冠)の模式産地はそのさらに南にあるので、「E.albertensis」の名が付されてはいるが、倶梨伽羅玉に似たタコ物をイメージしていた。それに、そもそもBiesiespoortは倶梨伽羅玉の模式産地である。発見者であるGerhard Marxは蘭蛇丸と同定しているけど、個人的には学名表記するなら「E.sp.aff.crassipes」が適当であり、百歩譲っても「E.sp.aff.albertensis」とするべきタコ物が分布しているのだろうと予想していた。



Biesiespoortに至る道の入口にて

 グラベルロードに入ってしばらく走ると、道の北側にE.stellispina(群星冠)が生えているのを見つけた。ここにも分布しているのかぁ。。。


N1号線−Biesiespoort間の景色1


N1号線−Biesiespoort間の景色2


群星冠1


群星冠2


群星冠3


群星冠4


群星冠5



 <日誌のこの部分は非公開>



 16時42分。緩やかな北向き斜面で索敵開始。最初に見つけたのは、潅木の根本に隠れるように生えていたガガイモと思われる植物。ぱっと見はE.globosa(玉鱗宝)のようだ。しかし、その近縁種も含めて分布しているのはここから数百kmも離れた東方であることを考えると、玉鱗宝の仲間じゃないだろう。ゆーふぉなら新種の可能性もあるが、日没まで時間がないのでタコ物探しを優先して写真撮影のみにしておいた<ちょい傷をつけてゆーふぉか否かの確認ぐらいしとけば良かったなと帰国後にちょっとだけ後悔>。次に見つけたのもガガイモ。これもどうでもいい。他にもクルクル葉っぱの植物があったけど、それもどうでもいい。俺が探しているのはタコ物のみ。今は他の植物はどうだっていい。探している間もどんどん日は落ちていき、東に伸びる影が少しずつ長くなっていく。そして、焦りが大きくなる。それでも、名前しかわからない正体不明のタコ物をなんとしても見つけるんだという想いは揺るがなかった。


名無し10−4−1


名無し10−4−2

 16時57分、ついに発見!よっしゃーっ!!やったゼーっ!!!


これがE.albertensis GM240だ!

インターネット上での画像公開は世界初!
(2016年1月1日公開)


上の画像の株アップで


微妙に角度を変えてもう1枚

「日本のプロレスゆーふぉファンのヤツら全員によ、一言だけ。
 言いたくねぇよ、こんな事。
 マジでさ、テメェらなんかに言いたくねぇんだ、ホントによ!
 まぁ、一言だけだよな、一言だけ。
 サンキューな!」


 このポイントで探し始めて15分で狙っていたタコ物を発見することができた。テンションは一気に最高潮。その勢いで周辺をさらに索敵する。17時12分に2株目、17時29分に3株目となる双頭株を見つけることができた。


2株目


3株目


E.albertensis GM240の分布地の様子
(写っているのは1株目)

 3株目を見つけた後にもう少し索敵してみたが、4株目は見つけることができなかった。気付けばこのポイントで索敵を始めて1時間が経過していたこともあり、索敵を打ち切った。

 見つけることができたE.albertensis GM240は、E.decepta(緑鬼玉/大宝冠)に酷似している。サンプルとして3株では十分とは言えないけれど、1株目と2株目については本種のほぼ最大サイズであると考えた。そうすると、このタコ物は主幹の幅5cm程度の小型種ということになる。研究者のPeter Vincent Bruynsは外見が酷似していることを理由に蘭蛇丸は緑鬼玉に含まれるとしている(2012年に発表した論文で)から、このタコ物は蘭蛇丸で間違いないだろう。結論として、Gerhard Marxの同定は正しかった。そして、俺の推測は間違っていた、ということだ。いや〜、参りました。Gerhard Marxにも、自然にも。倶梨伽羅玉の分布エリアを挟んで、その南北に分布しているとは思わなかったなぁ<もちろん分布域が重複しているという可能性もある>。1時間探しても3株しか見つからないということは、本種も数が少ないタコ物なんだろう。3株とも潅木の根本ではなく、オープンスペースに生えていた。この点は倶梨伽羅玉や緑鬼玉とは異なる本種の特徴の1つであると言えよう。


名無し10−4−3


左の画像の同種別株

 3株見つけることができたので、満足感いっぱいで索敵したポイントを後にする。午前中にE.clavarioides var.clavarioides(飛頭蕃/飛頭蛮)を見つけられなかったし、今日はボウズかもしれないと覚悟していた。この地に来るまでBiesiespoortという地名しか手がかりがなかった。航空偵察を何度も何度も繰り返して目星をつけていたけど、予想とは全然違うポイントに自生していた。でも、結果的には不利な要素を全てはね除けて、最後の最後で貴重なタコ物をハントすることができた。さすが俺様w

 18時55分、15℃。Hutchinsonの東200〜300m地点でR63号線に戻り、北西へ。

 19時05分、19℃。Victoria Westの町に到着。まずはガソリンスタンドで満タン給油。1リットル=12.62ランド(約126円)。2年前の遠征で給油したのと同じガソリンスタンドだ。食料などを買いたいところだが、時間的にスーパーなどの商店は既に閉まっているので不可能だ。というわけで、給油後はすぐにN12号線を北へ。

 19時20分。Victoria Westから北の最初の休憩所にピットイン。時間的にちょうど良いので、晩メシにする。Aberdeenで買った最後のペッパーステーキパイだ。食べながらこの後のスケジュールを考え、予定を変更して今夜はBritstownの町の近くで車中泊することにした。場所はもちろん前回の遠征でE.fusca(蛮蛇頭/蛮竜角)をハントしたポイントのすぐ近くにある休憩所。Britstownまでは残り100km弱なので、食後はのんびり休憩した。

 20時05分、16℃。休憩所を出て、Britstownに向かう。

 20時55分、16℃。Britstownの町に到着。廃業したガソリンスタンドの店舗を利用した店で食料調達をした。ペッパーステーキパイとムートンカレーパイ、それとファンタのパイナップル味。

 21時10分。予定の休憩所にピットインした。のんびりして、眠くなってからそのまま就寝。



※Google マップの各機能が使えます

作戦終了地点  Britstown
本日の行軍距離  428km
総行軍距離  4010km





inserted by FC2 system