多肉じゃんきーたちへのアフリカ旅情報


 多肉植物の故郷アフリカに行ってみたいという人は多い。中には時間もお金もなんとかなるけれど、現地についての情報が少ないために躊躇している人もいると思う。そういった人の参考になるように2013年のアフリカ遠征での経験を基にアフリカを旅する際に役立ちそうなことをいろいろ書いてみた。ただし、「アフリカ」と銘打ってはいるものの、ナミビアと南アフリカ共和国(以下「RSA」と表記)しか行っていないし、その2ヶ国も全ての地を巡ったわけではないので、あくまでも俺が行った場所についての情報だ。また、月日が経てば状況は変わるし、社会情勢の変化や法律の改正などもあるので、あくまでも参考程度に。なお、この情報を基に旅をして何か不利益を被ったとしても、当方は一切責任を負わないのでそのつもりで。



 1.日本−アフリカ間の航空券について

 ゴールデンウィーク・シルバーウィーク・年末年始などの旅客が多い時に往路もしくは復路が重なる時は、できるだけ早く予約を取るべし。自分の目的地が日本人があまり行かないアフリカであっても、必ず途中で乗り継ぐことになるので、そこから日本までの往復が他の国や地域に行く日本人とも競合になるためだ。また、現地から日本へ行く人と競合になる場合もある。例えば、シルバーウィークの終わり頃は中国の国慶節(建国記念日で中国では1週間の大型連休となる)と近く、日本へ向かうチャンコロや日本に一時帰国する現地駐在の日本人も競合相手になる。この場合、香港で乗り継ぐ場合は復路の競合相手が多いので、早めに航空券を確保した方が良い(9月の航空券の値段は3月下旬から4月上旬に出揃うので、その時に手配してしまうのが良い)。航空券の予約は、出発日の330日前から可能だ。ただし、格安航空券の場合は何らかの事情でキャンセルする場合に返金されない場合がほとんどなので要注意。また、フライトスケジュールの変更もできない場合が多いので、予約する時にしっかりと確認しておくこと。


 2.旅行の資金について

 旅に出るためにはもちろん金が必要。贅沢をすればきりがないが、最低限いくら必要なのかという目安を記す。2013年の遠征を例にとれば、日本−ナミビア間の航空券が23万円強(燃油サーチャージ等全部込み)、2週間のレンタカーの費用が11万円強、ガソリン代・交換したタイヤ代・飲食費・宿泊費などの全ての滞在費が17万円ほどだった。もちろんこの他に日本から持っていった諸々の物品の購入費や空港までの往復の費用は別にかかっている。旅の期間や仕方によって必要な資金量は変わってくるが、余裕を持って旅をしたいところだ。


 3.旅行中の現金について

 ナミビアとRSAの田舎町ではトラベラーズチェックは使えないので、現金を持つこと。日本からアメリカドルを持参し、現地で現地通貨に両替することになる。遠征の本文にも記載したとおり、ナミビア国内でRSAの通貨ランドが1:1で普通に使用できるのに対して、RSA国内では額面の7割ほどとしてしか使えないらしい(俺自身は支払い経験なし)。ということで、ナミビアの通貨であるナミビアドルに両替するよりも、ランドに両替してそれをずっと使う方が良い。なお、1ランドは約10円(2013年現在)である。また、首都や大きな町ではVISAやアメックスなどのクレジットカードを使用できる大型店もあるが、カード犯罪を未然に防ぐためにもできる限り使用しないことを薦める。困った時に使うぐらいの気持ちでいた方が良い。なお、複数の国の紙幣や硬貨が混ざると支払時に毎回手間も時間もかかるので、日本円・米ドル・現地通貨と分けて収納するために複数の財布を持っていくことを薦める。


 4.言葉について

 日本人が海外旅行をする際に最も懸念することの1つである。旅の間は現地の人と会話をする機会が必ずある。ナミビアもRSAもアフリカーンス語の話者が多い。アフリカーンス語はオランダ語からの派生言語で、短期間に日常会話ができるレベルまで修得するのはとても難しい。しかし、どちらの国でも多くの人が英語も話せるので、中学生程度の英語を話すことができれば問題ない。しかし、お年寄りや義務教育を受けられないほどの貧困家庭出身者はアフリカーンス語しか話せないため、ジェスチャーを交えて会話するか、諦めて別の人に話しかけよう。こちらがたどたどしい英語しか話せなくても、相手は一生懸命理解しようとしてくれるし、簡単な単語を選んでわかりやすく話してくれる。それに旅の間ずっと朝から晩まで英語ばかり話していると、だんだんと相手の言うことがわかるようになるし、こちらの伝えたいことも伝えられるようになる。正確な文法や難しい単語は必要ない。大事なことは、話しかける時に恥ずかしがらず、偏見を持たず、偉そうにしないこと。そうすれば相手は心の扉を開いてくれる。さらにジョークのひとつもかませば、心の距離はぐっと縮まる。そして、会話の最後を笑顔の「サンキュー!」で締めれば、現地の人との触れ合いも楽しいものになるはずだ。


 5.治安について

 RSAといえば殺人や強盗などの凶悪犯罪が頻発するというイメージがあるだろう。日本人も被害にあっているが、それはヨハネスブルグを筆頭とする大都市のことであり、地方の町ではそんなことはない。海外旅行の経験が多い人なら感覚的にわかるだろうが、治安が悪いエリアは住民の家や店のセキュリティーが厳重であったり、街並みが汚い(路上にゴミが散乱していたり、落書きが多かったり)のですぐにわかる。「君子危うきに近寄らず」でそういった所には近寄らず、もし入り込んでしまった場合はすぐに立ち去ること。地方の田舎町についても、町の大きさはいろいろなので、人口が多い町ではそれなりに注意をした方が良い。地方の町は治安が良いとはいっても、人がたくさんいれば悪人がいる可能性も高くなるからだ。また、ナミビアもRSAもアパルトヘイト時代の名残でどこの町も白人居住区と黒人居住区が分かれている。黒人居住区はいわゆるスラム街的な感じなので、海外旅行の経験が少ない人は近づかない方が無難。テント泊や車中泊をする場合は、主要道路にある休息所か町からある程度離れた道路脇が良い。就寝中は無防備になるので、念のため町の中や町のすぐ近くなど多くの人の目につく所は避けよう。


 6.旅のルート設定について

 まずは何の植物を探したいかということをはっきりさせることから始まる。インターネットや書籍で目的の植物の分布地を調べ、それを地図に落とし込んでいく。次に現地に滞在できる日数と移動手段からルートを設定する。その際に大切なのは、余裕を持って移動距離を設定すること。自分の体力に合わせて無理なく移動できる距離にするのが無難だ。また、1日の移動距離が長いと肝心の植物探しに割く時間が短くなってしまうので、お目当ての植物の個体数が少ない場合は発見が難しくなる。現地での植物探しはお目当ての植物が見つからない場合は1ヶ所に長く留まらず、分布地とされるエリア内やその周辺で次々と場所を変えた方が良い。土壌の変化など環境が変わればほんのわずかな距離でも植生が変わるからだ。1つのエリアで探せば特定のお目当ての植物を見つけられる可能性は高まるが、あちこち行けばより多くの種類のお目当ての植物を見つけられる可能性が高まるので、そのバランスが難しい。また、旅には予期しないトラブルが付き物なので、そのような事態になった場合は臨機応変に旅のスケジュールを変更することも大切だ。小学生の時に「家に帰るまでが遠足」と先生から言われたことがあると思うが、旅もそれと同じで無事に家に帰るまでが旅であるので、常にそのことを念頭に置いて行動しよう。


 7.交通事情について

 ナミビアにも鉄道網はあるにはあるが、はっきり言って使えない。RSAはナミビアに比べればずっとマシだが、それでも移動には不便過ぎる。1日の本数もたくさんあるようには思えないし。時間が限られた旅行中においては、時間のロスは非常にもったいない。バスも長距離バスもあるが、都市間移動の近距離バスはどのような状況か不明。やはりベストはレンタカー。費用はかかるものの、好きな時に好きな場所に行くことができるからだ。また、車中泊もできる。レンタカーを予約するならトラベルジグソーがお勧め。8月からの半年は観光のハイシーズンなので、早めに予約しておくと良い。車種は4WD・SUV・クロスオーバーSUVを薦める。ダートロードやオフロードを走る時に街乗りの車ではタイヤが薄いのでパンクしたり、車高が低いので車の下面部を石などにぶつけて部品の破損に繋がるからだ。街乗りの車はレンタル費用が安いというメリットはあるものの、お勧めはしない。


 8.道路事情について

 予定ルートの道路が舗装されているかどうかは、Google Mapで拡大すればすぐにわかる。主要道路は舗装されており、路面の状況はとても良いので走りやすい。ただし、50kmに1箇所ぐらいの頻度で直径10〜20cmの穴が開いていることがあるので、路面から目を離さないように。高速でそこにタイヤがはまればパンクに繋がる。また、路面の穴以外にも野生動物が路上にいたり、急に飛び出したりするので運転中はよく前方を見ること(夜間は特に動物の飛び出しが多く、15秒に1匹の割合でウサギが路上に飛び出してきた所もあった)。
 未舗装の道路を走る場合は、土壌によって路面の状況が大きく変わる。土壌が砂や粘土の路面ならば100km/h前後でも安心して走ることができるが(ただしハンドルを取られるので轍には要注意)、小石が多いエリアはスピードを落として尖った石をできるだけ踏まないように走行しないとパンクに繋がる。自分の車に合うタイヤのサイズの入手が難しい場合もあるし、それなりに費用もかかるので、できるだけパンクは避けたいところだ。旅行中に一度はパンクするものと考えて、いざという時に備えて旅行前に自家用車で一度スペアタイヤへの交換作業をやってみることをお薦めする。
 道路はナミビアもRSAも日本と同じ左側通行なので、車も右ハンドルだし、日本人も違和感なく運転できる。ただし、街中の所々に日本人には馴染みが薄いラウンドアバウトがある。主要国道にはないが、ナミビアのKeetmanshoopの町のすぐ南にあるB1号線とB4号線の分岐点は例外的にラウンドアバウトになっているので、高速で突っ込まないように注意すること。ラウンドアバウトがある旨の標識が立っているので見逃さないように(俺は見逃して高速で突っ込みかけたけどw)。
 速度については、ナミビアもRSAも郊外の制限速度は120km/h。Traffic Police(交通警察)のパトカーも普通に130km/hで走っていくので、10〜20km/hの速度オーバーなら問題ないと思う。ただし、カーブが続くポイントなどでは制限時速が80km/hなどになっており、道路標識で制限速度が示されているので見逃さないように。また、そのような区間ではネズミ取りをやっていることもあるようなので注意が必要。対向車がパッシングでこの先でネズミ取りをやっていると教えてくれることもある。町の中では、60km/hとかそれ以下に制限されている。また、信号のない交差点にはどちらの道路にも一時停止が必要な場合が多いので、しっかり一時停止をすること。RSAには交通警察がすごくたくさんいるので、捕まらないためにも、また自分が事故を起こさないためにも交通ルールを守るように。
 郊外ではトラックなどの大型車を除く全ての車が120km/h以上で走っているので、大きな道に出る時は遠くまで左右を確認すること。そして、自分が入るつもりの車線に車が来ている時は通り過ぎるまで出ないこと。相手は高速で走っているため、こちらが走り出しても十分に加速する前に距離が縮まって大きく減速させることになる。アフリカではこれはマナー違反。交通量はものすごく少ないので、慌てて道路に出なくても、近づいて来る車が通り過ぎた後でも十分大丈夫だ。慣れないうちはかなり余裕を持って道路に出るようにしよう。
 異国の地ですぐに120km/hの運転に慣れるのは難しい。しかも植物を探したりするために周囲をキョロキョロ見ながらの運転ではなおさら高速で走れない。慣れないうちは現地人の車に抜かれることになるが、その際にちょっとしたマナーがあるので紹介しておく。後続車に追い抜いて欲しい場合は、前方が見通しの良い直線道路であり、かつ対向車が遠くまでいないことを確認する。次に車線の左側に車を寄せ、右ウインカーを点灯させる。これで「追い抜いてくれ」というメッセージが後続車に伝わる。後続車は前方の安全を確認して追い越していく。追い越した後続車はハザードランプを2〜3回点灯させて「サンキュー」とメッセージを送ってくるので、こちらも2〜3回パッシングして「どういたしまして」とメッセージを返す。こんな感じ。ハザードをたかない奴にはもちろんパッシングは不要だ。やってみると実に気持ちが良い。まあ、アフリカにもスピード狂はたくさんいるので、普通に走っていても追い越しをかける奴はたくさんいる。
 こちらが追い抜く時はこれの逆をやればいい。右ウインカーを出してから反対車線まで車を出し、一気に抜き去ってから抜いた車との車間距離が十分開いたところで左ウインカーを出して元の車線に戻る。高速運転に慣れたら、トラックやおんぼろの車はどんどん抜いていかないと時間をロスするので、時には追い越しも必要だ。ただし、追い越し時の前方の安全確認は入念にするように。また、自分の後ろの車が2台抜きをかけることもあるので、後続車がいる時は追い越し時に後方確認もすること。カーブや斜面の頂上付近など見通しが悪い所での「対向車はいないだろう」という思い込みによる追い越しは事故につながる。実際にそのような所には、路面にブレーキ痕が路外に向かって黒く残っていることが多い。これは対向車線の無理な追い越しに巻き込まれたものと思われる。言葉も満足に通じないアフリカで事故を起こしたり巻き込まれたら、運良く死なずとも破損したレンタカーの処理や病院関係のことなど、思わぬ問題が発生することになる。また、死んでしまった場合、自分自身は身から出た錆だとしても、家族や関係者にかける迷惑は半端ない。くれぐれも事故を起こさないような運転を心がけよう。
 それと雨天時・曇天時・霧が出ている時など日中でも視界が良くない時は、必ずライトを点灯すること。対向車に自分の車の存在を遠くからでも確認させやすくするためだ。反対車線の追い越しに伴う事故を回避することにつながる。
 植物を探すためなどの理由で路肩に停車する場合は、必ず車体が道路から完全に出るように停めること。日本国内のように道路内に車体がはみ出している駐車の仕方は、現地の人にとってはマナー違反。事故防止のためにもできるだけ道路から距離をとって駐車しよう。
 車に必要なガソリンは、町ならどこでもガソリンスタンドがある。24時間営業で商店が休みになることが多い土曜日と日曜日も開いている。しかし、村レベルではないと思った方が良い。ナミビアとRSAではナミビアの方がガソリンを含めて物価が安いので、国境を超える時はナミビア側のNoordoewerで満タンにしていくことをお勧めする。ただし、ナミビアでもHermeringhausenなどの地方の町では高い。ガソリンを入れる時は、満タン注文でもいいし、○○○ランド分という注文もできるが、旅の行程も考慮しながら余裕を持って毎回満タンにしておくのが良い。特にナミビアは町と町の距離が非常に離れているので、ガス欠にならないように注意が必要。値段は1リットルで日本円にして120〜140円ぐらい。レギュラー満タンを頼みたい時は、「アンレーテッド フル」と言う。できればチップとしてお釣りの小銭から2ランド程度店員にあげるのが良い。


 9.植物の探し方について

 現地に行けばわかるが、道路脇には延々と牧場の柵が張り巡らされている。柵はワイヤーや有刺鉄線で作られているが、牧場主が個人で設置するものなのでその作りは様々である。牧場内で放牧されている家畜が逃げないためのものなので、人が乗り越えるのは難しくないのだが、他人の敷地内に許可なく入り込んだ場合、家畜泥棒と間違われて射殺される可能性があるのでできるだけ控えるように。別に法律を確認したわけではないが、アメリカや南米では合法とされているから、アフリカでも同じである可能性が高い。だから、敷地内への立ち入りはできるだけ土地の所有者、いなければ牧場の従業員に許可をもらってからにしよう。彼らは家畜たちに害を加えるわけではないとわかれば快く敷地内の探索をOKしてくれる(俺は一度も断られたことはなかった)。その際に目的の植物についても訊いてみれば、情報も得ることができるので一石二鳥だ。
 また、植物についての情報は牧場主よりもそこで働いている従業員の方が詳しい。知っていれば、どんな場所にあるかとか、どこのポイントにあると教えてくれるだろう(ただし、事実と異なる場合も少なくない)。うまくいけば自生するポイントまで案内してくれるかもしれない。どの牧場もとてつもなく広く、その中にはいろいろな環境の場所があり、それぞれ植生も異なっている。時間がたっぷりあるならあてもなく自力で探すのも悪くはないが、限られた時間の中で効率良く探すなら現地の人から情報を得る方が良い。時にはガセ情報の時もあるが、ほとんどは悪意のないものなのでそれはそれで割り切るように。


 10.買い物について

 旅に必要なものはできるだけ日本から持っていった方が楽だが、飲料や食料などは現地で調達することになる。大都市には大きなショッピングセンターもあるし、スーパーなどもあるから入手には困らない。また、ガソリンスタンドにはちょっとした売店が併設されているので、そこで飲料と食料を購入することができる。しかし、野菜を入手することが難しいので、スーパーを見つけたらパッキングされた洗浄済みのサラダを購入することをお薦めする。なお、週末はアルコールの販売は禁止されているようなので、酒を飲みたい人は平日に購入しておくこと。もちろん「飲んだら乗るな」はアフリカでも厳守で。


 11.旅に必要なもの(パスポートや着替えなど当たり前のものは除く)

 @ ウェットティッシュ

 フィールドでは水がないので、ちょっとした汚れを落としたり、手をきれいにするのに便利。次回は必ず持っていこうと思っている。

 A リップクリーム

 アフリカの強烈な日光と乾燥した空気ですぐに唇が乾いて皮が剥けてくる。口を開ける度に裂けて痛いし、帰国後に治るまで良いことはひとつもない。「リップクリームなんてへたれが使うもんだゼ!」と思うのは自由だが、ないと現地でひどい目に合うことになる。これも次回は必ず持っていこうと思っている。

 B サングラス

 強烈な日光から目を守るのに必要。日が出ているうちはずっとかけていることになるので、デザインよりもかけ心地の良さを優先するべし。破損しないように眼鏡ケースもあった方がベター。破損に備えて、できればスペアも持って行った方が良い。

 C 荷物札

 パンチ穴が開けられた紙片に針金がついたもの。採集した植物に採集地や整理番号などを記入し、根や枝などに結び付けておくと植物の整理がしやすい。100円ショップの文房具コーナーで数十枚ごとのセットで売られている。

 D 刷毛

 植物の根をクリーニングする時に必要。土が付いていたら書類が揃っていようとも、日本に着いた時に植物検疫で焼却処分の憂き目にあうため、クリーニングは念入りに。もちろん毛先が固いものは植物を傷つけるので選ばないこと。使っているうちに毛先が痛んでくるので、できれば2本持っていくと良い。やり方については後述。

 E ピンセット

 植物をクリーニングする際にゴミを取り除くのに便利。

 F ビニール袋

 植物を荷造りする時に1株ずつ新聞紙で包み、それを1株ずつビニール袋に入れる。そうすることで、万が一土を落とし切れずに植物検疫でアウトになった株があったとしても、同じ箱に入れた他の株も道連れでアウトになることを防げる可能性が高い(荷造りの状況や検査官にもよるので絶対大丈夫とは言えない)。ちなみに新聞紙は宿で頼めば古新聞をくれるので、わざわざ日本から持っていく必要はない(少なくともWindhoekの宿では快くくれた)。

 G 音楽CD

 レンタカーにもCDプレイヤーは付いているはずなのでお気に入りの曲を入れたCDをたくさん持っていくべし。居眠り運転の防止や気分を盛り上げるのに役立つ。

 H お目当ての植物の写真

 お目当ての植物を探す時は現地の人に写真を見せ、どこにあるか知っているか訊くと良い。あれこれと説明するよりも確実にお目当ての植物を伝えられるからだ。まさに「百聞は一見に如かず」。現地の人から聞く話は間違った情報(悪意のある嘘ではない)もあるが、植物の発見につながる有用な情報を得ることができる時もある。現地のことは現地の人が一番よく知っているし、少なくとも我々日本人よりは知っている。ただし、相手はこちらと違って特定の植物に興味があるわけではないことを忘れないように。また、相手から求められなくても、相手の身なりに応じて暮らしぶりを判断し、チップとして小銭やタバコを渡してあげるのが良い。

 I スリッパ

 宿で心身共にリラックスするために、スリッパもしくはサンダルを持っていくと良い。屋内もしくは室内のちょっとした移動の際にいちいちブーツを履くのはめんどくさいしね。

 J 車用インバーター

 車のシガーソケットに接続してAC100ボルトの電源を取るやつ。カメラや携帯電話のバッテリーの充電に使える。カー用品店やホームセンターで1500円ぐらいから入手可能。

 K ターボライター(喫煙者のみ)

 遠征中はナミビア南部とRSAではずっと強い風が吹いていた。季節的なものかもしれないが、普通のライターでは火を点けるのに苦労したほど強く吹く時もあったので、ターボライターがあると便利。ジッポーでもいいかも。


 12.旅行中のお役立ち情報

 @ 飲み水について

 飲み水は店でペットボトル入りのものを購入する。炭酸水(「Sparkring」の表記あり)と普通のものがあるので、好みに応じて好きな方を買うと良い。ただし、できるだけ1.5リットルのペットボトルを買うようにする(理由はAで後述)。日本円で120〜140円程度で買うことができ、このサイズであれば口をつけて飲んでも1〜2日は問題なく飲むことができる。水道水は飲まない方が無難。旅の終盤以外は常に2本はストックしておきたい。

 A 雑用水について

 水を飲み終わったペットボトルは捨てずにとっておき、宿泊時などに水道水を入れて雑用水として蓄えるべし。フィールドで手や物を洗う時に使えるし、野宿時の歯磨き・洗顔・洗髪・シャワーなどにも使える。農場などでは風車で地下水を汲み上げており、オーナーや使用人に頼めば快く水をくれるのでフィールドで補給することもできる。非常時の飲料水になるのでこれもできるだけ切らすことのないように。また、歯磨きに使った場合は、最後に飲料水で口をゆすぐことを薦める。ちなみに俺は雑用水のペットボトルのラベルをはがして飲み水のペットボトルと区別していた。

 B 食べ物について

 食べ物もできれば常にストックを持っていたいが、食べ物が入手できるのは町中のみ。ガソリンスタンドには必ずと言っていいほど売店が併設されているので、そこで買うことができる。ただし、基本的にはパンやパイになるだろう。パイはレンジで温めるだけのものが売られているので、それを買っておけば翌日までは問題なく食べることができる。パン売り場もしくはレジでの会計時に「Warm?(ウォーム? 温めるか?)」と訊かれる。訊かれなくても「Warm,please」と頼めば温めてくれる。また、ある程度の大きさの町であればスーパーマーケットがあるので、そこで豊富な品揃えの商品から飲食物を選ぶことができる。野菜はビニール袋入りの洗浄済みのサラダが売られているので、ぜひ買っておくと良い。また、町と町の距離が離れているので、日本から非常食を持っていくことをお勧めする。B&B(ベッド&ブレックファーストのこと 夕食なし・朝食付きの安価な簡易宿)には電気ポットがあることもあるので、カップラーメンを持っていれば宿泊時に食べることもできる(現地のスーパーマーケットでも入手可能)。

 C 宿泊について

 旅行中に宿に泊まる時は、B&Bで十分。ある程度の大きさの町ならどこにでもあるし、満室で宿泊を断られることもまずないので事前の予約も不要。思わぬトラブルで旅のスケジュールや行程を変更せざるえないこともあるので、事前の予約が要らないのは嬉しい。他にもゲストハウスなどもあり、町の入口に看板が出ていることもある。宿の有無や場所は町に入って通行人に訊けば親切に教えてくれる。店に入って買い物ついでに訊くのも良い。ただし、ナミビアの首都 Windhoekのカメレオン=バックパッカーズに宿泊することを考えている場合は、宿泊客が多いので旅行前1ヶ月前までに予約しておいた方が良い。小金をケチらず、複数人で使用するドミトリーではなく、シングルルーム(ベッドは複数あるけどね)を予約するのがお勧め。荷物や現金の盗難の心配がないし、他人に気を遣わずに洗面台で植物のクリーニングをできるからだ。ただし、シングルルームでも隣室に水の音が漏れるので、深夜・早朝のクリーニングはマナーとしてやめよう。ちなみに「Fish Eargre」の部屋は、洗面台の部屋の隣が共有キッチンなので深夜・早朝のクリーニングも問題ない。予約時に可能であればこの部屋を指定すると良い。テント泊や車中泊をすることも考えている場合は、日本から寝袋を持参するなど防寒対策をしっかりとすること。日中は暑くても、放射冷却で深夜・早朝はとても寒くなる。特にRSA中部の乾燥地帯は、放射冷却で明け方に0℃以下になることもあるので、就寝中の防寒対策をお忘れなく。

 D 植物のクリーニングについて

 日本へ植物を持ち込むためには、到着した空港で植物検疫を受けて合格する必要がある。その必須条件として、植物に付着している土をクリーニングをしなければならない。根だけでなく、茎や葉にもついていないかよくチェックしよう。けっこう面倒な作業だが、Kさんに教えてもらったのが刷毛でのクリーニング。まず植物についている大きなゴミを取り、根についた小石や砂を指で落とす。次に洗面台に水を張り、水中で植物の茎・葉・根を刷毛で優しく撫でて土を落とす。それを2〜3回繰り返し、最後は流水で洗い流せば完了だ。あとは水を切って、しっかりと乾燥させること。乾燥が不十分なまま梱包すると、枯れて残っている花枝などが水分でカビてしまうからだ。また、最悪の場合、株自体が腐ってしまうかもしれない。悲しい思いをしないためにも、クリーニングとその後の乾燥はしっかりと。


 13.法律について

 これも重要なこと。RSAでは全ての野生動植物の採集及び国外への持ち出しが法律で禁じられている。実際に過去に日本人の逮捕者も出ていて、非常に高額な罰金を科せられたのは有名な話。以下は2004年はじめ頃の外務省渡航情報の抜粋である。

 最近半年間で、南アフリカ共和国、特に西ケープ州内で、同州自然保護法に違反して野生動植物を捕獲ないし採取した容疑により、日本人が逮捕され、裁判において多額の罰金刑を科せられた事件が3件発生しています。事件概要は以下のとおりです。また、同州ではこの他にも外国人が自然保護法違反で逮捕され、同様に多額の罰金刑を受けています。現地に渡航・滞在される方は、以下を参考に十分ご注意下さい。

 @2003年9月4日、西ケープ州オウツフルンにおいて、日本人が許可無しで約550本の多肉性植物を採取し逮捕され、裁判の結果7万5000ランドの罰金刑の判決を受けた。
 A2003年10月、西ケープ州セダーバーブ公園において、日本人が不法に蜘蛛1匹を採取した容疑で逮捕され、裁判の結果1500ランドの罰金刑を受け、併せ外国から持ち込んだ昆虫類も没収された。
 B2003年12月24日、西ケープ州クランウィリアム近郊において、日本人3人が14匹の亀を不法に捕獲した容疑で逮捕され、裁判の結果各自10万6000ランドの罰金刑の判決を受けた。

 南アフリカ共和国、特に西ケープ州において野生の動植物を捕獲ないし採取するとき、または海外から野生動植物を持ち込むとき、あるいは持ち出すときは次の点に注意する必要があります。

 (1)西ケープ州においては、「西ケープ州自然保護法」により野生の動植物を許可なく捕獲ないし採集することは禁じられており、同法に違反した場合には犯罪となります。また海外から野生動植物を南アフリカ共和国に持ち込むとき、また同国で捕獲ないし採取した動植物を持ち出すときには各州ごとに別途許可が必要です。
 (2)同州において野生動植物を捕獲、採取、また持ち込み、持ち出すときは西ケープ州自然保護局へ申請し、許可証を入手する必要があります。同保護局は申請がある場合、学術調査に限り許可しますが、それ以外の趣味または商売等の目的のための申請は許可されません。

 南アフリカ共和国は世界的に珍しい野生の動植物が多数生息していると言われ、世界の研究者、マニア等が注目するところとなっていますが、特に西ケープ州自然保護局は最近違反者の取り締まりを強化しています。また一般市民にも自然保護への協力を求め、不審な人を見つけた場合、自然保護局に通報するように呼びかけを行っています。これら一般市民の協力により逮捕されるケースが多く見られます。なお、2003年の西ケープ州における犯罪件数は120件(うち外国人による犯罪15件)に達しています。
 南アフリカ共和国の他の州でも野生の動植物は同様に保護されており、捕獲や採取、持ち込み、持ち出しについては、各州の自然保護局の許可が必要ですので、ご注意下さい。


 まあ、こんな感じでRSAの許可証を取るのは非常に困難。現地で観察し、写真を撮るだけにしておくのが無難だ。ナミビアについても、ゆーふぉについて言えばCITESUに指定されているので、国内への持ち込みのためにも政府機関に申請して輸出許可証が必要になる(申請から許可証までの交付期間は概ね3日程度だが、事務量に応じて変わるとのこと)。さらに野生株の場合は、輸出許可証以前の問題としてフィールド探索及び採集の許可証がないと合法的に採集ができない。それは輸出許可証の申請に添付書類として必要になるもので、取得するには少なくとも採集を行う3ヶ月前までに政府機関に申請しなくてはならない。つまり、合法的にゆーふぉを持ち帰るハードルは高いということだ。


 14.ゴミについて

 旅の間、どうしても避けれられないのがゴミ。自然破壊にもつながるので、現地でのゴミのポイ捨ては絶対にやめてもらいたい。買い物をすればビニール袋に入れてくれるので、それにゴミを集めてメインロード沿いにある休憩所のゴミ箱や宿のゴミ箱に捨てるようにしよう。現地ではゴミの分別はほとんどしていないようだが、宿によっては多少の分別をしなくてはならないので指示に従うこと。


 15.日本人の面汚しになるなかれ

 近年、成金のチャンコロどもが海外に出て、行く先々の国で恥を晒して笑い者になったり、マナーに反することをして忌み嫌われている。所構わず痰を吐いたり、ホテルや飛行機内の備品を持ち帰ろうとしたり、ビュッフェで食べきれないほど料理を取ってきて大量に食べ残したりとマナー違反をあげればきりがない。海外に出れば、現地で出会う人にとってはあなたの印象がそのまま日本人全体の印象になるし、他人にもそれを話して拡散していく。つまり分類学っぽく言えば、あなたが日本人のホロタイプになるということだ。良いことをしても、悪いことをしても、それがそのまま「あなたの評価」だけではなく、「日本人の評価」になる。だから、「旅の恥はかき捨て」だと思って恥知らずな行動をすることは控えてもらいたい。海外に出たら、旅の間は旅行者一人一人が「日本代表」である。自分に対する評価がそのまま日本人全体に対する評価に直結することを忘れず、常に日本人たる誇りと品位を持って行動するよう心掛けてほしい(まあ、俺が言うのもどうかと思うけどw)。






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